2017年10月14日土曜日

論文発表数の減少(1)


 のっけから悲観的な話題だが、日本人研究者による国際誌での論文発表数の世界に対する割合がこの10年間で急落しているらしい。これはNature Index 2017 Japanによる報告で、日本人にとって大きな警告となっている。このニュースに対して、私の中で意外なという驚きと、当然だろうという矛盾した印象をもった。

 意外という理由は、ここ10年ほどの心理学領域において、国際誌にかなり日本人若手研究者の論文が掲載されるようになったからである。20世紀の時点では、国際誌での日本人の論文は本当に少なく、欧米の大学で博士号を取得した「偉い先生」に限られていたという印象だった。しかし、インターネットによって論文検索が容易になり、グローバル化の波に乗って海外の国際学会で発表する機会も増え、国際的な第一線で活躍している研究者との意見交換も容易になって、このような進歩があったのであろう。

 当然という理由は、大学教員の職責という点で、研究に割くことができる時間がおそろしく減少しているという点である。この最も大きな要因は、人員の削減と、精神的消耗を伴う仕事の増加である。人員の削減は、教員だけではなく、事務職員まで及び、事務職員は多忙を極め、教員は教育と研究以外のさまざまな仕事をしなければいけなくなった。また、私が所属する大学はまだましなのだが、私立大学の場合は、夏はオープンキャンパス、秋は推薦入試等が目白押しで、週末がおそろしく潰れてしまう。そうすると、学会等に参加できない、土曜日によく行う自主研究会を行えない、論文を読んだり書いたりする時間が激減するという状態に陥る。ちょうど小中高の教員が、さまざまな雑務のために、最も大切な授業の準備ができなくなるということと同じことが起きているわけである。

「大学の教員なんて、授業は少ないし夏休みは長いし、仕事をさせておけ」程度の認識でこういう状態が放置されていていいのだろうか。これは、ノーベル賞受賞が減るとかそういう議論ではなく、知のあり方といったもっと本質的なレベルで為政者に考えていって欲しい問題である。
 

1 件のコメント:

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    m.iisaka@sprix.jp"

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